おとうと
弟の話。
幼稚園では人気者だった。
男女問わず友達が家に来ていたし、ラブレターももらったりして、高校生になった弟は俺のモテ期はこの頃だったと言っていた。
〜〜〜
弟の抵抗だったのか??
母に彼氏ができて遊びに出かけるとき。
必ずと言っていいほど、窓から飛び降りて死んでやる!と騒ぐ。
母の彼は車で迎えにくる。
母は一緒に出かけようと私と弟を誘うが
飛び降りてやる!の押し問答をする。
もう何度も。何度も。
毎回のことだからどうせ飛び降りないからとだんだん周りも止めなくなってきて、弟もエスカレート。
死ぬ!って大声で叫んだり。
窓に身を乗り出していたから、
近所のおばさんも危ないわよーって叫んでた。
弟みずから警察に電話して、ぼくを逮捕してくださいって言ったり。
あの行為は何だったんだろう。
弟は弟なりに新しい父親になるであろう彼に抵抗していたのだろうか。
祖父母と出かけるときはやらなかったから。
学生時代は勉強ができたのでクラスでは1位か2位でテストもいつも100点か悪くても80点代。
できの悪い私はテストの答案をその辺に置いておく弟にイライラしていた。
なぜなら定期テストを知らぬ母は、弟の答案を見てテストがあったことを知るからだった。
地域で1番の高校に進学し、大学へと進んだ。
しかし、夏前に中退してしまう。
留年して、次の年も合格したのにまた1年も経たずにやめてしまった。
このときは私も自分のことで精一杯だったからあまり弟のことをよく覚えていないが、哲学にはまり、自分は何で生きているのかをずっと考えているという生活をしていた。
弟は私よりも義父の怒りの空気を感じとることができず、たくさんたくさん殴られた。
私は弟をかばうことよりも、今日は弟が殴られる対象でほっとしている自分がいた。
ごめんね…
ほんとにごめん…
いまはバイトしたり、派遣したりして働いている。
ついこないだ母のところに、義父と縁を切りたいから手続きしろと手紙が届いたらしい。
母と義父が離婚するしかないよね。
弟はこんな人生になったのは
お前のせいだと母を責めている。
母もそれを受け入れている。
夏頃に母から
「弟くん、この暑いのにティッシュ配りしたのよ!偉いわよねー」
と嬉しそうに連絡があった。
今でも、ぼくを愛して、ぼくを見て、構ってと
一生懸命に母にワガママを言っている弟を
見て、あの頃素直に甘えられなかった自分を取り戻そうとしているんだろうと思った。
一方で、私だけは母のことを理解してるでしょ?
ワガママ言わないで、ちゃんと自分で生きてるでしょ?
偉いでしょ?
ってアピールしてる。
姉と弟と同じ母を選んで生まれてきて、
違う方法で母からの愛の確認をしている。
弟よ
一緒に変な替え歌作って歌ったね
ドラえもんが好きで毎月交代で雑誌を買ったよね
一緒に昆虫を捕まえて育てたよね
どうか、どうか
幸せだったと言える人生を生きて欲しい。
どうかどうか楽しい人生を。